神戸への出張終了後、翌日は休みだったので三宮で一泊し、久しぶりに「乗り鉄」三昧の一日を過ごすことにしました。
「さんちか」で程よくお酒をいただき、同行者とお別れし、ホテルに行く前にまず、目の前を走るポートライナーの「北埠頭経由」線に。夜だけどまあいいか、と乗ったものの、酒の力に敗北し、ほとんど寝ていたという有様。とりあえず北埠頭駅で降りてみたのですが、またしても酒の力に負け、写真の1枚も残さず退散。ただアリバイづくりに乗ってみたようなものでほぼ記憶なし。惨敗です。でも乗車したことには変わりなし。
翌朝、気を取り直し、ホテルを出て和田岬線へ向かいます。
乗車予定だった8:25発西明石行をめざしJR三ノ宮駅の改札でsuicaをタッチ…したがエラー。有人窓口で出入記録をチェックしてもらうと、昨夜のポートライナーの出場記録がないとのこと。当然ここでは処理してもらえないので、あわててポートライナーの窓口へ向かい、訳を話して出場を記録してもらいましたが時すでに遅く、時計は8:30を回ってしまいました。ならば、予定の逆回りで地下鉄で和田岬駅に向かい午前の最終列車に間に合わせてみせましょう。
和田岬線とは、兵庫駅~和田岬駅間2.7キロを結ぶ山陽本線の支線の通称でして、平日・土曜日は朝夕の通勤時間帯にしか列車が走っておらず、休日たるや一日2往復のみという、フリで来た客になんか乗ってもらっては困る、一見さんお断り、的な大変敷居の高い路線です。(←違う)…そうではなく、利用者が三菱重工業の造船所をはじめとする周辺の工場等への通勤需要に特化した路線なのです。最近は廃止の噂もちらついており、とりわけ神戸市営地下鉄海岸線の乗客をなんとしても増やしたい神戸市は「和田岬線が地域を分断」などという理由もつけてJR西と協議を始めているそう。
利用客3割減 和田岬線の廃止検討 JR西日本 (2011/02/15神戸新聞)
JR西日本が、神戸市兵庫区の和田岬線を廃止する方向で検討を始めることが分かった。神戸市営地下鉄海岸線の開通などで利用客が約3割減った上、「地域を分断している」として地元から廃止を求める声が上がっていた。JR西と神戸市は2011年度、地元団体を交えた協議の場を設け、廃止を前提に地域の活性化策を検討する。(足立聡、木村信行)
和田岬線はJR兵庫駅から分岐する支線の通称で、長さ2.7キロ。終点の和田岬駅は1890(明治23)年に貨物駅として開業し、1911(同44)年に旅客駅となった。
和田岬駅の2009年度の乗降客数は1日約1万人。平日は朝夕のラッシュ時に計17往復を運行し、三菱重工業や三菱電機などで働く通勤客が主に利用している。だが、01年開通の地下鉄海岸線に乗客の一部が流出し、三菱の従業員の減少で乗客は約3割減っている。
一方、神戸市は09年度に「兵庫運河活性化協議会」を設立し、地元住民らと議論。第5次神戸市基本計画(11~25年度)で臨海部を重点活性化エリアと位置づけ、兵庫運河を生かしたまちづくりを進めている。
同協議会では、運河を巡る船の運航や歩行者が回遊できるルートの整備を検討したが、その際に「和田岬線が地域を分断している」と指摘が出ていた。これを受け市は今月4日、矢田立郎市長名で同線の廃止を求める要望書をJR西に出した。
和田岬線と競合する地下鉄海岸線の利用者数は、1日4万人(09年度)と当初予測の13万人を大幅に下回っている。市が廃止を求める背景には、約830億円の累積赤字を抱える海岸線の利用促進を図る狙いもあるとみられる。JR西は「まちづくりに協力する観点から存廃を検討する」と、廃止の方向で協議する。
今どうなっているかよく分かりませんが、JR西だって数少ない黒字の和田岬線をやすやすと廃止したくないから、微妙な言い回しでお茶を濁していますし、この記事から4年経っても廃止されていませんから、まだ協議は決着していないのでしょう。
和田岬線を目の敵にしている大赤字路線、地下鉄海岸線の三宮・花時計前駅へ。噂どおりの人の少なさ。本当にここは三宮なのか、と疑ってしまうほど寂しげ。なにしろ開業前の予測輸送人員の3割程度なのですから、そりゃ赤字も当たり前なんだけど、そもそもその予測は高すぎるだろ。この三宮・花時計前駅も平均乗車人数が6,782人/日(2013年度)(※リンク先はPDF)。西神・山手線の三宮駅(60,372人/日)の1割強にすぎない惨状です。
鉄輪式リニア、予測輸送人員との乖離と乗客の少なさ、など、まもなく開業する某市の地下鉄のことが頭をよぎりますが、先に進まないのでとりあえずスルー。
和田岬駅まで10分もかからず到着。
地上に出ると、ありました、和田岬駅。駅舎もなく、券売機も簡易型IC改札もなくオープンです。ホームには大きなサクラの木。向かいにはファミリーマートがあるのですが、ここは以前駅舎があった場所らしいです。
ほどなくして午前の最終列車がやってきました。青22号に塗られた懐かしの103系6連(延命N40工事施工車)。低運転台で2灯シールドビーム使用の1973年生まれの彼らは、もともと近モリに配属されて朱色1号に塗られ大阪ループ線をぐるぐる回っておったのですが、和田岬線が電化された時にお色直しされて近アカにお引越ししてきました。ぐるぐるから開放されたのに今度はひたすらピストン、とは数奇な運命ですなあ。
車内に入ると、天井にはなんと扇風機が回ってます。これまた懐かしい。ちなみに降りてきた乗客は10人以下。乗車したのは私含めて5人程度。
8:55発兵庫行532Mは、淡々と工場や住宅の中を進み、兵庫運河を渡り、阪神高速との交差手前で、数々の鉄道車両を産んでいる川重車両カンパニー兵庫工場の引込み線が左から合流し、ほどなく兵庫駅に到着。
兵庫駅には和田岬線の乗り換え専用改札が鎮座し、乗換客をがっちりガード。「和田岬駅から」の自動券売機もあったようです(記憶なし)。東武西新井駅の大師線乗り換え口と同じシステムですね。
ここからJR神戸線で再び三ノ宮へ。さらに阪神三宮駅へ移動します。
▲阪神三宮駅に停車中の近鉄9820系奈良行
次のお相手は山陽電鉄。かつて乗ったような記憶もあるのですが定かでないので、とりあえず乗ってしまいます。
やってきた直通特急は阪神車でしたが、かぶりつき確保。
山陽電鉄はJRとの並走区間や駅の雰囲気が京急に少し似ていて実に楽しいし、車窓も海やら明石海峡大橋やら、これまた飽きません。あっという間に1時間が過ぎ、山陽網干線が分岐する飾磨駅に到着。
飾磨駅は途中駅なのに櫛型ホームの2面3線。網干線は下り本線を平面クロスして、真ん中に入線して両側のドアを開放する、とても乗り換えし易い構造(丸の内線の中野坂上駅と同じ)。
網干線では山陽電鉄の古参3000系・3200系のワンマン3両編成が頑張っています。
この近辺には今から33年前、82年3月に来たことがありました。
今は亡き、播但線の先っぽ、姫路から飾磨港までの通称「飾磨港線」に乗りに来ていました。ちょうど山陽電鉄飾磨駅から1キロほど西側を走りこの網干線とアンダークロスしていました。まったく記憶はないですが、家捜ししたところ、切符と一緒に凄いものが出てきました。
この「播但線 飾磨駅・飾磨港駅のしおり」。情報量がすごいです。当時旅客列車が一日2往復しか走らない超閑散路線だった駅のものとは思えません。
さて、網干線に戻らなきゃ。飾磨から住宅地をまっすぐ西に向かって走り、20分程度で網干駅到着。昔々、この先相生・赤穂まで延伸計画があったそうですが、40年以上前に免許が失効したのでその計画はお蔵入り。兵庫県内しか走っていないのに「山陽電鉄」というやたら大きい名前の訳はその延伸計画にあったようです。
網干線を乗り終え、飾磨から本線に戻り、山陽姫路まで再び「直通特急」。今度は山陽の5200系。手柄から山陽姫路までは2006年に「逆高架化」工事(JR姫路駅周辺の連続立体交差事業に伴って、それまで高架だった山陽電鉄が干渉するので地平に降りた)が行われた区間。ここは前述した旧播但線の廃線跡が利用されています。JRをくぐると高架に上がり山陽姫路駅に到着。
姫路に来たら姫路城…なのですが、そういう「無駄」な時間はないので、先を急ぎます。でも、姫路といえば「まねきのえきそば」!! これは外せません。最近、だいぶ全国区になってきましたが、この「駅そば」はかんすいを使った中華麺とか沖縄そばの麺に近いものなのです。
新幹線に乗るのですが、駅そばを食べるために一度在来線ホームに赴きまして、クソ暑い中、駅そばをズルズルすすってきました。
熱い駅そばのせいで汗が引かないまま、新幹線ホームに上がると、あの姫路市営モノレールの橋脚が3本、まだ撤去されずに残っているのが見えました。だいぶ撤去が進んでいると聞いていたので、まだ残っているうちに見ることができて幸せ。
126Aにて姫路から新神戸に戻り、今度は北神急行電鉄です。12:05着でしたが、ギリギリ12:11発谷上行に間に合いました。
この北神急行電鉄というのが、複雑怪奇な鉄道です。
◆運行形態:全て神戸市営地下鉄西神・山手線と直通
◆運営(営業・運行):自社 →「第2種鉄道事業者」
◆施設所有:神戸高速鉄道(2002年に譲渡)→「第3種鉄道事業者」
◆会社:阪急・神戸電鉄等が出資して設立 現在は阪急阪神HDの連結子会社
神戸市や兵庫県がぶち上げる鉄軌道構想に乗っかって一儲けできるともくろんで作られた関係上、第三セクターだとずっと思っていたのですが、純民間でした。しかし巨額の累積債務にあえぐ同社は前述のように神戸高速鉄道に施設を売却したり、子会社になったり、あれやこれや策を繰り出しているものの300億円の債務はあまりにも重い…。六甲山の下を貫く北神トンネルの闇の中で、気分が重くなりました。かの川島令三氏によれば、懲りない兵庫県は北神線を丹波市の福知山線谷川駅までさらに延伸する計画を抱いているとかいないとか。もはや妄想の域に達してますね。
…長すぎるので、続きは次のエントリーへ。
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