東京近郊区間に翻弄される

今、しもだて美術館で開催されている「江口寿史イラストレーション展『彼女』」がどうしても見たくなり、近所の駅のみどりの窓口で乗車券を購入した時の話を少々。

ちょうど東京で出張もあるので、その前の日の休日を使おう、だったら新幹線はつまらない、と、いつものように普通は考えない行程が頭に浮かんだ私。

仙台からいわきへ高速バスで向かい、そこから水戸ー友部ー下館ー小山ー東京と進むプラン。
そこで、「いわき→東京都区内（水戸線経由）」の乗車券を買おうと、みどりの窓口の係員氏に申し出ました。すると「途中下車しますか？」との問い。

ここで気づきました。
あ、「東京近郊区間」だった…。

JR東日本旅客営業規則より

（途中下車）
第156条　旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅（旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については、最終着駅）以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。

（1）全区間の営業キロが片道100キロメートルまでの区間に対する普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅。ただし、列車の接続駅で、接続関係等の理由により、旅客が下車を希望する場合で、旅客鉄道会社が指定した駅に下車するときを除く。

（2）次にかかげる区間（以下「大都市近郊区間」という。）内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅

イ　東京附近にあっては、東海道本線中東京・熱海間（第16条の2の規定にかかわらず、東海道本線（新幹線）東京・熱海間を除く。）及び品川・新川崎・鶴見間、山手線、赤羽線、南武線、鶴見線、武蔵野線、横浜線、根岸線、横須賀線、相模線、伊東線、中央本線中東京・塩尻間及び岡谷・辰野・塩尻間、青梅線、五日市線、八高線、小海線中小淵沢・野辺山間、篠ノ井線中塩尻・松本間、東北本線中東京・黒磯間（第16条の2の規定にかかわらず、東北本線（新幹線）東京・那須塩原間を除く。）、日暮里・尾久・赤羽間及び赤羽・武蔵浦和・大宮間、常磐線中日暮里・いわき間、川越線、高崎線（第16条の2の規定にかかわらず、高崎線（新幹線）大宮・高崎間を除く。）、上越線中高崎・水上間、吾妻線、両毛線、水戸線、日光線、烏山線、水郡線中水戸・常陸大子間及び上菅谷・常陸太田間、信越本線中高崎・横川間、総武本線、京葉線、外房線、内房線、成田線、鹿島線、久留里線及び東金線（以下これらの区間を「東京近郊区間」という。）

以下略

何言ってるかわからないですね。
こういうことですね。

JR東日本の「きっぷあれこれ」のページの「運賃計算の特例」
https://www.jreast.co.jp/kippu/1103.html

大都市近郊区間内のみをご利用になる場合の特例

図のそれぞれの大都市近郊区間内のみを普通乗車券または回数乗車券でご利用になる場合は、実際にご乗車になる経路にかかわらず、最も安くなる経路で計算した運賃で乗車することができます。

重複しない限り乗車経路は自由に選べますが、途中下車はできません。途中で下車される場合は、実際に乗車された区間の運賃と比較して不足している場合はその差額をいただきます。

そう。いわきは東京近郊区間内にある駅なので、途中下車しないなら、「いわき→東京都区内（常磐線経由）」の乗車券で水戸線経由でも構わないのです。ただし経路通りの券も買えるはずです。

そこで、「下館で途中下車したいので、経路通りの乗車券が欲しい」とリクエストし、係員氏も了承しマルス端末に向かったのですが、それが簡単なことではなかったのでした。係員氏が何度入力しても、エラーがでるらしいのですわ。
で、最初に発見された券は想像通り「いわき→東京都区内（経由：三河島）」。
いや、これ、ダメでしょ。「水戸線！！」と強めに呟いたら、「あれ、やっぱり入力されない」と。

何度やっても弾かれるので、係員氏が「ちょっとお待ちください」と奥に引っ込み相談へ。
5分ほどして（後ろに並んでいた皆様、すいませんでした）、先輩と思わしき係員B氏登場。しかし同様に入力が弾かれる。そこで係員B氏が裏技を繰り出してきた。
「上野→東京を新幹線経由にして発行すれば近郊区間相互区間じゃなくなる」と(笑)。それか。

※旅客営業規則第156条(2)イを読むと新幹線が除外されていることが分かります。

係員B氏が奥に引っ込み、2回目の発券。「これで大丈夫です」

「いわき→東京都区内（経由：逢隈、水戸線、常磐線、上野、新幹線）」

いやいやいや、「逢隈」っておい。常磐線北上してるし。そもそも不通区間またいで発券できるのか、なんだこの券。どうしてこうなったの。

※「逢隈駅」は常磐線岩沼駅の一つ手前にある宮城県の駅

係員氏もびっくりしたようで、この貴重な券は写真を撮る間もなく、即、没に。

この時点で20分近く経過しており、並ぶ人も増えてきたので、思いついた解決策を提案。
「すいません。発駅をいわきじゃなくて、草野にしてもらえます？近郊区間問題解決するでしょ」
係員氏、（なぜ、お前それを先に言わないのか）と思ったかどうか知りませんが、ホッとした様子でついに発券終了。

発券終われば別に何の面白みもないきっぷで、むしろ2枚目の「逢隈」の方が面白かったのですが、まああのきっぷだと、ひたちの車内でレチさんを悩ませる可能性があるんで、もういいです。
諸悪の根源は、東京近郊区間がいわきまで広がってることだよ。でも、やっぱり入力できない、っていうのは何か手順が間違ってたんだろうなあ。経路通り売れないなんてことはありえないからなあ。